海に育つ

akaisan2007-10-30

 この名前を聞いてピンと来る人? いるかなぁ(^^)
 例によっていつもの公民館で電車本をあたってた時に Young Adult コーナーで見つけました。 児童書をちょっと卒業した青少年?の為のコーナーってところです。 R. アームストロング作 林 克己訳 岩波少年文庫 147・・昭和32年9月10日 第1刷発行 (左:右は昭和48年8月20日 第9刷発行) 400円 公民館で借りたのは第9刷で35年くらい前のとっても古いものですが、とてもきれいな本です。
 それよりもなによりも内容が素晴らしい・・ 貨物船ラングデイル号に乗り組んだ実習生キャムが、リバプールカリブ海への航海を通じて成長していく過程を綴っています。 もちろん小説なのでわくわくするようなエピソードもどんどん出てきます。 それにもまして登場人物は誰も彼もがいい味を出しています。 本文中にほとんど登場しないケリー船長のキャムに対する一言一言も、なんともたまりません。
 「それだけじゃない。 もっとあるさ、キャム。 決断力と、物事をどこまでも貫徹する能力。 危機にあっても、それを切り抜ける力量。 船がぶつかった時も、なんとかして船を沈めないだけの才覚。 それに一番大切なのは、船員を自分の船員として、どこまでも掌握していく力だな。 餓え、寒さ、しけ、こんな時に何かを信じなければ、船員たちはとてもがんばれないという時に、自分を信じさせ、たたかっていかせる力なのだよ。 これはりっぱな仕事だ ーー 本当の男の仕事といえるだろうな (P187)」
 「航海術などは、学校でギュウギュウつめこまれて、丸暗記したってできるし、衝突予防法でも運用術でも、それぞれりっぱな本があって、きまりきった問題にきまりきった答えを出していけば、それで結構卒業はできるのさ。 そこで、表紙に金文字の入った、りっぱな免状をもらえるだろう。 しかし、それだからといって、船乗りでございます、とはいえないし、何か事が起こった時に、どうしていいかわからないで、うろうろするに決まっている。 第一、それさえも気がついていないのだ (P188)」
 ちょっと引用してしまいました。 ちょっと説教っぽい引用でお恥ずかしいですが、これ以外にも、海と船と自然と人間の素晴らしさの表現がたくさん盛り込まれています。 男の子ならぜひ読んで欲しい・・というオジさんの気持ちです。
 ちなみに、著者の Richard Armstrongは、この本 "Sea Change" で、1948年に "Carnegie Medal ~An outstanding book for children and young adult readers, first have been published in the UK" を受賞しています。 納得!