たった一人の生還 「たか号」漂流二十七日間の闘い

 先日購入した舵誌のP49に <海の一冊に学ぶ> という2ページの特集?があり、そこに紹介されていました。 このたか号の事故は1992年で、当時のニュースとしてはかすかに覚えています。 事故の後、佐野さんがこの本を執筆されたことも知っていましたが、本を手に取ることはありませんでした。 そして事故のこともほとんど記憶から消えていたのですが、くだんの舵の記事を読んだあと、先週の日曜日に図書館に行き、探して借り出したのです。
 事故に至るまでの顛末、艇を放棄してからラフトでの漂流、仲間の死、そして救出・・ 書ききれない内容もたくさん残しながら(と感じます)も、後世に読み伝えるべき最低限の情報についてはていねいにきちんと語られていると思います。 この感じを言葉や文章ではうまく言えないのですが、ヨットに乗る仲間なら伝わるでしょうか。
 さまざまに不運が重なって命を落としていく艇のメンバーについての記述にはおもわず目を閉じてしまいます。 それにしてもぎりぎりのところで佐野さんが救出され、この本を書いたことは本当に良かったと思います。 全てのメンバーが命をなくしていたら事実はどのような形でも残ることはなく、本当に誰もこのことを知らないままで終わってしまいます。 本で記録されることで死んでいったセーラーの気持ちや残したかった言葉が後世に伝わることになります。 まったく本というものの偉大さを感じました。