地震の日

 被害のことが判るにつれて書けなくなってくるけれども、書き留めて置きたいことだけはメモしておこうと思います。
 "そのとき" はビッグサイトの展示会場西ホールにいて、展示品の説明をしていました。 ぐらぐらと始まって「あっ、地震だ」と思ったけれども "まあ、すぐ止むかな" と思いました。 でもなかなか止まらず、だんだん揺れが大きくなってきました。 展示会の作り付けのブースや高い天井がミシミシと揺れはじめて "こりゃあかん!" と思いましたが、まだ天井を見上げながら様子を伺っていました。
 しかし・・・ ぶわぶわと揺れはじめたあたりから、回りにいたみんなと一緒に屋外に向かって走りはじめていました。 出口の回りはガラスの壁がいっぱいで、一歩外から空を見上げるとさらに高いピラミッドを逆さにしたような会議棟が目の前です。 何か倒れてきたらどこにも行きようがないということはすぐに理解できましたが、といってもどこに行く訳にも行かずです。 そうこうしているうちに少し揺れは収まっきました。
 すこし落ち着いたようなのでいったん展示会場に戻ったのですが、すぐに二回目の大きな揺れがやってきました。 その直後、事務局からは「展示会中断」の連絡が入りました。 すぐには頭が切り替わらなかったのですが、「全員ただちに退場してください」との放送も入ってきたので、とるものもとりあえずジャケットを着て鞄を持って外へ出ました。 この頃はまだ日差しがあり、それほど寒くはありませんでした。 (青海駅のほうに黒雲が広がっていたのですが、今にして思えばテレコムセンターの煙だったんですね) 小一時間何をするでもなく佇んだ後で、会社の仲間と連れ立って会場の建物を離れたのですが、ゆりかもめりんかい線が運行停止しているのは判って、バスも長蛇の列の割にはバスそのものがいません。 しかたなくどこへ行く当てもなくみんなで駅に向かって歩きはじめました。
 りんかい線の駅に近づいた頃は陽も落ちて北風が寒くなってきました。 おまけにポツポツと雨が落ちてきました。 道の向こうにホテルが見えたので、まずはいったん逃げ込んで、うまく部屋が確保できたら確保しようなどと話していました。 しかしカウンターには 30人くらいの列。 しかももう部屋自体は Sold Out とのこと・・ とりあえず少し休憩と思い、二階のロビーへあがりホテル内のコンビニで食料を買い込んでカーペットに座り込みました。
 しばらくするとレストランが席を解放してくれているとの情報が入りました。 食料を持って席を確保すると、冷水とかウーロン茶とか暖かいコーヒーまで出してくれました。 「なんてうれしい・・・」 ときたま余震が続いて、ペンダントを揺らしていましたが、パンをかじったり、持っていた充電器で携帯を充電したりして休んでいました。 (大勢でいる安心感でした) しばらくすると、運営事務局から「会場撤収してください」との連絡が入りました。 そうですよね、後片付けなしで終わるわけにはいかないですから・・・ そこから冷たい風の中を再び会場に戻り、全ての器材を梱包しトラックに積み込みました。
 仕事を終えてレストランに戻ってからみんなでピザとパスタで夕食にしました。 「朝までこの感じでいられればいいねー」と会話していたのですが、10時には閉店するとのことで、カーペットのロビーに戻り、いわゆる雑魚寝に入りました。 まわりも人がいっぱいで、寝返りをうつとぶつかってしまうくらいです。 そう、混み合ったフェリーの三等船客室ってところでしょうか。 暖房が効いているので寒くはないのですが、やはり背中は痛かったです。 あと横になった場所が悪かったのですが、照明が眩しくてちょっとうつらうつらするだけで時間が過ぎていきました。
 疲れていましたが「ここに来て良かった。 こういうときのホテルは頼りになるなぁ」と激しく思いました。 ちなみにホテルの名前は「ホテルサンルート有明」です。 レストランの料理もとてもおいしかったです。