イタリア使節の幕末見聞記

 またまた通勤図書館本(ありがとう藤沢市)です・・ 「イタリア使節の幕末見聞記」(V・F・アルミニヨン著、大久保昭男訳:昭和62年 新人物往来社 1,800円)
 著者のアルミニヨン(V.F. Arminjon)はイタリアの軍艦マジェンタ号(機帆船)の艦長として、首都フィレンツェ(まだローマがイタリアではなかった・・)から南米モンテビデオを経由し幕末の日本へと航海をおこないました。 そして欧米列国の中ではほとんど最後になりましたが、1866年、江戸幕府と通商条約を締結しました。 この本は著者が綴る140年前の交渉のあれやこれやと、欧米人から見た幕末の日本(もっぱら江戸)の生活や風俗を詳しく記録している日本滞在記であり、たいへん面白いです。
 イタリアという国はそれ以前に開国を迫ったアメリカ、イギリス、ロシア、フランス、スペイン、ポルトガルといったいわゆる覇権主義のスタイルと違い、あくまでも貿易を主眼に、基本に正道でありかつ友好的です。 当時の日本が国際感覚から遥か遠くにいるとの認識はしかたない(そのとおりだし)ですが、日本の文化や生活そのものに触れる視点には偏見も無く、文化人類学者のような観察をしています。 こういう人を代表として送り出す・・そういう意味では最も文化的に進んでいた国だったんでしょう。
 このシリーズはまだ数冊発刊されているようなので探して読んでみたいです。